ネット選挙でやってはいけないことは何か?逆にやってもOKなことは?
調べても情報がまとまっていませんよね?
そこでこのページでは、有権者がネット選挙運動でやってはいけないことをまとめています。
たとえば、政治家本人や政党以外はネット選挙運動でメールを一切使ってはいけません。
しかし選挙期間中なら、LINEやメッセンジャーで直接「投票お願いします。」とメッセージを送るのはOKです。
有権者がメールでお願いするのはダメだけど、メッセンジャーなら問題ありません。
また、ホームページや立候補者のSNSに投稿された画像を印刷して配ってはダメです。
一方で、選挙期間中にTwitterを使って「○○候補に一票をお願いします!」のような発信をしても大丈夫です。
上記のような事例を有権者側にしぼり、選挙管理委員会や総務省のサイトによりわかりやすく解説してみました。
選管や総務省の解説は、難しい言葉が多く固い表現ばかりで何をいっているのかわかりにくいですよね。
選挙運動とは?
「ネット選挙でやってはいけないこと」を理解するには、そもそも選挙運動とは何かを理解する必要はあります。
選挙運動とは、選挙の名前が明確な状態で、特定の立候補者に投票をお願いする活動のこと。
「次の衆議院選挙では、愛媛の○○●●さんに投票をお願いします!」と伝えるのが、もっともわかりやすい選挙運動ですね。
ですから、ブログ・SNS・LINEなどを使って投票をお願いする活動がネット選挙運動です。
選挙運動は、総務省のサイトで以下のように説明されています。
総務省のサイトより引用
判例・実例によれば、選挙運動とは、「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」とされています。
出典: www.soumu.go.jp
選挙期間中以外に選挙運動をやってはいけない
選挙運動ができる期間は、選挙の公示・告示日から投票日の前日です。
選挙期間中以外は、選挙運動が禁止されています。
選挙期間以外で、SNSやブログを使って投票を呼びかけられません。
違反すると、1年以下の禁錮またはは30万円以下の罰金が課されます。
さらに選挙に関する法律違反となるため、選挙権が停止されます。
総務省のによって選挙運動ができる期間は下記のように定められています。
総務省のサイトより引用
選挙運動は、選挙の公示・告示日から選挙期日の前日までしかすることができません(公職選挙法第129条)。
違反した者は、1年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処することとされており(公職選挙法第239条第1項第1号)、選挙権及び被選挙権が停止されます(公職選挙法第252条第1項・第2項)。出典: www.soumu.go.jp
SNSを使って公示前にやってはいけないこと
公示前にSNSで「次の衆議院選挙に立候補する○○さんに投票してください。」とお願いしてはいけません。
公示後の選挙運動期間なら、SNSで特定の立候補者に投票をお願いしてもOKです。
選挙でTwitterは禁止と聞いたことあるけど…?
いいえ、選挙でTwitterは禁止でありません。
禁止されているは、選挙運動期間以外にTwitterで特定の立候補者へ投票をお願いする行為です。
また、選挙当日は選挙運動期間以外になるので、Twitterで特定の立候補者へ投票をお願いしてはいけません。
しかし投票に行ったことをTwitterで発信するのはOKです。
「○○投票所に行ってきました。」
「衆議院選挙の投票をしてきました。」
上記のような報告は問題ありません。
有権者は選挙運動で絶対にメールを使ってはダメ
有権者は、いかなる場合でも選挙運動でメールを使ってはダメです。
メールで「○○●●さんに一票入れてね。」と伝えてはいけません。
メールで立候補者のチラシの画像やホームページのスクリーンショットを送ってもダメです。
なぜなら、メールを使えるのは、立候補者か政党だけだからです。
出典:自由民主党
「メールは差出人を簡単に偽装できるから」というのが理由になります。
今となってはSNSでも簡単に身分を偽装できますけどね。
とにかく、有権者側は絶対にメールで「投票お願いします。」などと送信しないようにしましょう。
立候補者や政党以外が選挙運動でメールを使うと、2年以下の禁錮または50万円以下の罰金が課されます。
選挙運動におけるメール
・abcxxx@gmail.comなど、@マークが入った一般的なメールサービス
・SMSなどショートメッセージ
上記の2つのメールを使って投票をお願いするのはダメです。
080や090で始まる電話番号宛に送るショートメッセージもメールになるので、気をつけましょう。
総務省のホームページで、選挙におけるメールは以下のように定義されています。
総務省のサイトより引用
その全部又は一部においてシンプル・メール・トランスファー・プロトコルが用いられる通信方式(SMTP方式)
携帯して使用する通信端末機器に、電話番号を送受信のために用いて通信文その他の情報を伝達する通信方式(電話番号方式)出典: www.soumu.go.jp
LINEやFacebookメッセンジャーでの選挙運動は可能
選挙期間中にメールで投票をお願いするのはダメですが…
選挙期間中にLINEやFacebookメッセンジャーで投票をお願いするのはOKです。
なぜなら、FacebookやLINEは「ホームページ扱い」で「メール」とは認識されていないからです。
もちろん、TwitterのDMやInstagramのメッセンジャーで投票お願いするのもOKです。
選挙期間中に投票のお願いをするなら、各SNSのメッセンジャーをフル活用しましょう。
選挙でSNSに関して注意すること
先に解説したとおり、SNSを使って選挙運動期間以外で特定の立候補者に投票をお願いしてはダメですから…
FacebookメッセンジャーやLINEで、選挙運動期間以外で投票をお願いしないようにしましょう。
FacebookメッセンジャーやLINEは、自分で消さない限り発信したメッセージは残ります。
仮に自分で消したとしても、消す前にスマホやパソコンにスクリーンショットを保存されてしまうと公選法違反の証拠になってしまいます。
選挙でSNSを使う場合、スマホやパソコンに投稿やメッセージが簡単に保存できることに注意をしておきましょう。
ホームページや画像を印刷して配ってはいけない
選挙で、TwitterやFacebookで立候補者のホームページをシェアするのはOKです。
だからといってホームページや写真を印刷して配ってはダメです。
選挙活動で使えるチラシには厳密なルールがあって、しかも1枚1枚証紙を貼る必要があります。
立候補者のホームページや画像を勝手に印刷したものは、選挙活動で認められていないチラシやビラになってしまうからです。
総務省のサイトより引用
【文書図画の頒布の規制】
選挙運動のために使用する文書図画※は、インターネット等を利用する方法により頒布する場合を除き、公職選挙法第142条に規定された一定のもののほかは、頒布することができません。
したがって、ウェブサイト等に掲載され、又は電子メールにより送信された文書図画であっても、それを紙に印刷して頒布することはできません。
違反した者は、2年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処することとされており(公職選挙法第243条第1項第3号)、選挙権及び被選挙権が停止されます(公職選挙法第252条第1項・第2項)。出典: www.soumu.go.jp
選挙関係の画像をUSBメモリやDVDに記録して配ってはいけない
選挙関係の画像を印刷しないで、データとしてUSBメモリやDVDに保存して配ってはいけません。
画像を見せたい場合は、FacebookやLINEなどSNSでシェアして見せてあげましょう。
総務省のサイトより引用
<文書図画を記録したDVD、USBメモリ等の取扱い>
文書図画を記録した電磁的記録媒体、例えばDVDやUSBメモリを頒布することは、当該文書図画を頒布する行為とみなされます(改正公職選挙法第271条の6第3項)。
したがって、例えば選挙運動用文書図画を記録したDVDやUSBメモリを頒布することは、法定外の選挙運動用文書図画を頒布する行為に当たり、認められないこととなります。出典: www.soumu.go.jp
18歳未満は選挙運動をしてはいけない
公職選挙法では18歳未満の人が選挙運動することを禁止しています。
また18歳未満の人を使って選挙運動に参加させることも禁止しています。
しかし18歳未満の人に選挙運動のための簡単な雑務をしてもらうことは認められています。
たとえば…
・選挙事務所でお茶を出す
・郵便物を出す
・選挙事務所に何かを運搬する
上記のような作業をしてもらうことです。
18歳未満の人が選挙運動すると、1年以下の禁錮または30万円以下の罰金が科せられます。
総務省のサイトより引用
【未成年者等の選挙運動の禁止】
未成年者(年齢満20歳未満の者)は、選挙運動をすることができません(公職選挙法第137条の2)。
違反した者は、1年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処することとされており(公職選挙法第239条第1項第1号)、選挙権及び被選挙権が停止されます(公職選挙法第252条第1項・第2項)。出典: www.soumu.go.jp
その他の選挙運動をしてはいけない人
18歳未満の人以外に、以下の人も選挙運動を禁止されています。
・投票を管理する選挙関係者
・裁判官、検察官、警察官等など特定の公務員
・選挙犯罪等により選挙権および被選挙権を有しない者
買収など選挙犯罪を犯して選挙権がない人は選挙運動をしてはいけません。
総務省のサイトより引用
また、以下の者も選挙運動を禁止されており、それぞれ、違反した場合の罰則が定められています。
選挙事務関係者(投票管理者等)(公職選挙法第135条)
特定公務員(裁判官、検察官、警察官等)(公職選挙法第136条)
選挙犯罪等により選挙権及び被選挙権を有しない者(公職選挙法第137条の3)出典: www.soumu.go.jp
ネット選挙で悪質な誹謗中傷やなりすましをするとどんな罪に?
インターネットは誰が発信しているかわかりづらいので、選挙では誹謗中傷やなりすましが起こりやすいです。
ですから、誹謗中傷となりすまし・発信者が誰かわからないようにするのは常にセットになります。
ネット選挙で偽名やなりすましを防ぐための「表示義務」
ネット選挙で偽名やなりすましを防ぐために、選挙運動で使うホームページなどには電子メールアドレスの表示を義務付けています。
上記をネット選挙における「表示義務」といいます。
メールアドレス以外にも、問い合わせフォームやTwitterアカウントなど直接連絡が取れるものを表示しておいてもよいです。
ニックネームやハンドルネームのみでは表示義務を満たしませんので、気をつけてください。
総務省のサイトより引用
<表示義務>
選挙運動又は当選を得させないための活動に使用する文書図画を掲載するウェブサイト等には、電子メールアドレス等※を表示することが義務づけられます(改正公職選挙法第142条の3第3項、第142条の5第1項)。※ 電子メールアドレス等とは、電子メールアドレスその他のインターネット等を利用する方法によりその者に連絡をする際に必要となる情報をいいます。具体例としては、電子メールアドレスの他、返信用フォームのURL、ツイッターのユーザー名が挙げられます。
出典: www.soumu.go.jp
偽名やなりすましで誹謗中傷した場合の罪
有権者が意図的に立候補者の当選を妨害したり、逆に特定の立候補者が当選するように活動する際に嘘の名前や誰かになりすました場合は処罰されます。
具体的には、4年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金を課されます。かなり厳しいです。
総務省のサイトより引用
(虚偽事項公表罪)
当選を得させない目的をもって公職の候補者に関し虚偽の事実を公にし、又は事実をゆがめて公にした者は、4年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処することとされ(公職選挙法第235条第2項)、選挙権及び被選挙権が停止されます(公職選挙法第252条第1項・第2項)。出典: www.soumu.go.jp
ネット選挙で名誉毀損した場合
有権者がネットを使って立候補者の名誉毀損をすると、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金が課されます。
ただし、発信した内容が本当だった場合は罰を受けません。
総務省のサイトより引用
(名誉棄損罪)
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処することとされています(刑法第230条第1項)。
なお、公職の候補者に関する事実に係る場合、真実であることの証明があったときは罰しないこととされています(刑法第230条の2第3項)。
禁錮以上の刑に処せられた場合、選挙権及び被選挙権が停止されます(公職選挙法第11条第1項第2号・第3号)。出典: www.soumu.go.jp
ネット選挙における「侮辱罪」とは?
事実かどうかに関係なく選挙で相手を侮辱すると、刑事施設に入れられたり数千円~1万円程度の罰金が課されます。
総務省のサイトより引用
(侮辱罪)
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処することとされています(刑法第231条)。出典: www.soumu.go.jp
プロバイダ責任制限法の特例で迅速に誹謗中傷の投稿が削除されるかも?
たとえば、Twitterに立候補者の事実と異なる誹謗中傷の書き込みがあった場合。
Twitterが誹謗中傷の書き込みを消しても、罪には問われません。
上記のたとえにおける「Twitter」が、プロバイダとなります。
ネット選挙における迅速な誹謗中傷対策のために、特例が定められました。
ただし誹謗中傷だと申請すれば、何でも削除されるわけではありません。
「誹謗中傷しているホームページに管理者と連絡が取れるメールアドレスが表示されていなかった」など、表示義務を怠った上で誹謗中傷している。
たとえばの話ですが、上記のように義務を果たさず一方的に誹謗中傷している場合などは削除の申請が通る可能性が高まります。
有権者が気をつけるべきは、匿名だからといって事実ではない誹謗中傷をしていると罪に問われる可能性がある、ということです。
ちなみにプロバイダ責任制限法では、
・プロバイダが誹謗中傷された側から削除依頼を受ける
・誹謗中傷の投稿者にその旨を通知する
・その後「7日間」投稿者の意思表示がなければ削除できる
と決められています。
しかしネット選挙における特例では、選挙期間中に限り「2日間」に短縮されています。
選挙期間は非常に短いからです。
落選運動とネット選挙
特定の立候補者を落選させるための落選運動は認められています。
ですから、ネットやSNSを使って落選を呼びかけること自体に問題はありません。
落選運動は、誹謗中傷や侮辱とはまったく違うので注意しましょう。
ちなみに、特定の立候補者の当選を目的とした活動が選挙運動ですが…
落選運動は特定の立候補者の当選を目的としていません。
ですから落選運動は「政治活動」に含まれます。
選挙運動は公職選挙法でさまざまな制限を受けますが、落選運動は公職選挙法上の制限を一切受けません。
ただし…たとえば1人区の衆議院選挙で立候補者が2名の場合。
どちらか一方に対して落選運動するのは、もう片方の当選を助ける活動になります。
上記のようなケースの落選運動は、選挙運動になる可能性がありますので注意すべきです。
有権者が投票日にネットを使ってやってはいけないことって?
選挙運動ができるのは、選挙の公示・告示日から選挙期日の前日まで。
選挙当日・投票日はネットを使った選挙運動ができません。
ですからSNSなどで、
「○○さんに投票してきたよ!」と報告してはいけません。
特定の立候補者を応援する選挙運動になるからです。
「○○県議会議員選挙に投票してきたよ!」
「投票所に行ってきた。」
など、選挙に参加したことをSNSなどに投稿するのは問題ありません。
投票日には、選挙に行った・投票したことだけ投稿するようにしましょう。
インターネット選挙運動ガイドラインについて
総務省のホームページには、「改正公職選挙法ガイドライン」がPDFファイルにまとめられています。
https://www.soumu.go.jp/main_content/000222706.pdf
上記の内容を本にした「インターネット選挙運動ガイドライン」が、出版社「ぎょうせい」・インターネット選挙運動等に関する各党協議会から発行されています。
https://shop.gyosei.jp/products/detail/8226
「ぎょうせい」のホームページでは売り切れのようですが、Amazonなどでは入手できる場合もあります。
有権者側がネット選挙でやってはいけないことまとめ
ここまで有権者の立場から、ネット選挙でやってはいけないことを細かく解説してきました。
中でも有権者がやってしまいがちなのが…
・電子メールで知り合いに投票のお願いをする
・選挙期間前にSNSで投票のお願いをする
上記ふたつです。
有権者は絶対に電子メールやショートメールで選挙運動をしないようにしましょう。
また選挙期間前にSNSを使って特定の立候補者への投票をお願いしないようにしてください。
政治家や政党など立候補者側がネット選挙でやってはいけないことを、別の記事にまとめてる予定です。
コロナの影響で選挙運動のやり方を見直したい人は、下記の松山市議選のレポートをご覧ください。必見です。
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